はじまりはじまり

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 ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。 「友奈ちゃん落ち着いて!?」  むくれながらインターホンを連打する友奈を穂村は何とか止めて、宥める。友奈の手を引いて、マンションから出た。  車に乗り込んで、穂村はこっそりと息を吐き出す。友奈はいまだに不服そうにむくれていた。 「もう1人の所に行こ?」 「……うん」 「俳優の波風 優誠(ナミカゼ ユウセイ)だよね」 「知ってるの?」 「うん、何度か一緒になったことがあるから」 「ふーん?」 「一応、仲も良いよ」 「じゃぁ、何とかなる?」 「なったら良いな」  空笑いをする穂村に、友奈は首を傾げる。穂村は、溜息を1つ。エンジンをかけて、波風 優誠の住むマンションへとアクセルを踏んだ。 ****** 咲本 友奈は、目の前の穂村を鋭く睨んだ。睨まれた穂村は、居心地悪そうに縮こまりながら、マンションインターホンを黙って見つめる。 「出ないね」 「うん。る、留守かな」 「引きこもりの人が?」 「……居留守かな」 「たぶんね」  友奈の口から深い溜息が溢れだした。まだ、一応は出てくれた飯田の方が、マシな気がしてきた。それとも、居留守ではなく、本当に留守なのだろうか。  どうしたものかと、友奈は痛くなる頭を押さえた。結局、会えたのは仲の良い穂村のみ。 「こうなったら、社長の権限で事務所に呼び出して貰おう」 「最初からそうすれば良かったんじゃ」 「確かに」  2人は顔を見合わせて、溜息を吐き出した。 ****** 咲本 友奈は、目の前の荒城を不服そうに見つめた。ニマニマと可笑しそうに笑う荒城に、穂村は苦笑いを浮かべる。そんな3人を無表情で見つめる女性が1人。  椅子に座る荒城の隣に立っているのは、事務所一の敏腕マネージャー久留木 笑美(クルギ エミ)。焦げ茶色の髪をぴっちりと1つに括り、シャープな眼鏡をかけた如何にも真面目そうな出で立ちをしている。 「その感じ、あかんかった?」 「諦めても良いですか」 「もう少し頑張りませんか」 「じゃぁ、電話で呼び出してくださいよ」
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