1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。
「友奈ちゃん落ち着いて!?」
むくれながらインターホンを連打する友奈を穂村は何とか止めて、宥める。友奈の手を引いて、マンションから出た。
車に乗り込んで、穂村はこっそりと息を吐き出す。友奈はいまだに不服そうにむくれていた。
「もう1人の所に行こ?」
「……うん」
「俳優の波風 優誠(ナミカゼ ユウセイ)だよね」
「知ってるの?」
「うん、何度か一緒になったことがあるから」
「ふーん?」
「一応、仲も良いよ」
「じゃぁ、何とかなる?」
「なったら良いな」
空笑いをする穂村に、友奈は首を傾げる。穂村は、溜息を1つ。エンジンをかけて、波風 優誠の住むマンションへとアクセルを踏んだ。
******
咲本 友奈は、目の前の穂村を鋭く睨んだ。睨まれた穂村は、居心地悪そうに縮こまりながら、マンションインターホンを黙って見つめる。
「出ないね」
「うん。る、留守かな」
「引きこもりの人が?」
「……居留守かな」
「たぶんね」
友奈の口から深い溜息が溢れだした。まだ、一応は出てくれた飯田の方が、マシな気がしてきた。それとも、居留守ではなく、本当に留守なのだろうか。
どうしたものかと、友奈は痛くなる頭を押さえた。結局、会えたのは仲の良い穂村のみ。
「こうなったら、社長の権限で事務所に呼び出して貰おう」
「最初からそうすれば良かったんじゃ」
「確かに」
2人は顔を見合わせて、溜息を吐き出した。
******
咲本 友奈は、目の前の荒城を不服そうに見つめた。ニマニマと可笑しそうに笑う荒城に、穂村は苦笑いを浮かべる。そんな3人を無表情で見つめる女性が1人。
椅子に座る荒城の隣に立っているのは、事務所一の敏腕マネージャー久留木 笑美(クルギ エミ)。焦げ茶色の髪をぴっちりと1つに括り、シャープな眼鏡をかけた如何にも真面目そうな出で立ちをしている。
「その感じ、あかんかった?」
「諦めても良いですか」
「もう少し頑張りませんか」
「じゃぁ、電話で呼び出してくださいよ」
最初のコメントを投稿しよう!