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友奈の要求に、荒城は目を瞬かせた。そして、思案するように、手を顎に持っていく。
「出るかなぁ」
「社長の電話無視ってどういうことですか」
「まあまあ、ええやん?」
「どこがですか」
へらへらと笑う荒城に、友奈は呆れ返ったような顔をする。この社長は、何処まで適当なのか。よく今まで事務所が潰れなかったものだ。いや、今まさに潰れそうなんだったか。
荒城は、不意に視線を友奈から穂村へと移す。息なり自分に向いた視線に、穂村の肩が跳ねた。
「元気そうでなにより」
「お久しぶりです」
「おー、久しぶり久しぶり」
ひらひらと手を振る荒城に、穂村は安心したように、息を吐き出した。
「お変わりないようで」
「穂村もな?」
急に、意地悪く細められた瞳に見つめられ、穂村は居心地悪そうに視線を逸らす。
そんな穂村を横目でちらりと見た友奈は、小さく溜息を吐き出した。この社長は、変な所で意地が悪い。
「で? どうしたら良いですかね」
「何とかしたって?」
「適当すぎですからね?」
友奈は、助けを求めるように、視線を荒城から久留木へと向ける。
「久留木さんも手伝ってくださいよー」
「私はただ、仕事を取ってくるだけです」
「ですよね」
友奈は、ついに頭を抱えてしまった。その横で、穂村がオロオロと意味もなく手をさ迷わせる。
「ふっ、上等ですよ」
「友奈ちゃん?」
「全員、部屋から引きずり出してくれるわ」
「おぉ、背後に炎が見えよる」
変なスイッチが入ったらしく、友奈はメラメラと燃え上がっている。
「穂村くん行くよ!」
「うえ? ど、何処に?」
「作戦会議!」
「り、了解です!」
扉に向かって歩いて行く友奈の後ろを、慌てて穂村が追いかけていく。先が思いやられる4人の出会い。
これが全てのはじまりだった。
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