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『年齢については
杏だって同じじゃん。
杏が結婚して
もう子どもでもいるような
キャリア持ってたら
聞く耳持ってあげるけど』
「ああ言えばこう言う……」
旧知の仲の
女同士というのは、
もはや親愛的な挨拶代わりに
斬りつけ合うものなのかも
知れない。
最近、
お互いの至らない部分を
刺し合うことが多い。
不毛なやりとりに、
千佳も私も一瞬押し黙る。
ミルクパンの中で
ぐらぐらとほどけていく
麺を見ながら、
殺伐とした自分の緊張感に
嫌気がさした。
『……え、で、
なんだっけ。
映画?』
なんとなく察した千佳が、
少しテンションを下げて
訊いてくれる。
こういうところが
彼女のしなやかさだと
羨ましくなった。
私は一度出した意地を
なかなか引っ込められない。
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