生はまこと面倒に尽きる

4/46
1029人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ 「──痛いですか? 痛かったら、 言ってください」 背後から落ちてきた声は、 およそこの状況で 出されたとは思えないほど 冷淡だった。 ただ、 吐息混じりなのが それっぽいと言えば それっぽいけれど。 腕を取られ押さえつけられ、 とろとろと 酔わされそうになっていた 私の意識は、 まだ理性が 残っているらしい 彼の声に引き戻された。 別に痛くはない。 むしろそんな感覚を 通り越して、 抱いていたはずの 嫌悪感も迷子に なってしまっていた。 とりあえずそれを 伝えようとしただけなのに、 私の口は 「あ」 と甘ったれた声を 漏らしてしまう。 ふと、 彼の気配がゆるむのが わかった。 「……大丈夫そうですね」 鼻先で笑われて、 どうにも悔しい。 .
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!