生はまこと面倒に尽きる

41/46
前へ
/98ページ
次へ
  「昨日、 煙草を吸っていたでしょう。 だからと思って」 「あ、ええ。はい」 喫煙者だということを 確認されただけなのに 妙に居心地が悪くなり、 「すみません」と 小さくつけ加える。 聞こえているのかいないのか、 瑞島さんは 私の弱気をスルーして 奥のカウンターに目をやった。 「チケット、 買ってないんで。 行きましょう」 「え? あ、はい…… それで、あの」 「なんです?」 「これは、 どういう状況なのでしょうか」 「……?  映画を観に来たんですよ」 「はあ」 「ひとりでこういうところに 来れるよう、 育った世代ではないんですよ」 「なんとなくわかりますが」 「どうしてあなたか、 ってことですか」 「はい」 .
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1030人が本棚に入れています
本棚に追加