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思わず身構えながら
言われたあたりを見つめ、
あっと声を
上げそうになった。
この間の後輩の、
泣き顔としたたかさが
フラッシュバックする。
「(あれ、
佐竹さんじゃないですか!)」
「(そうです)」
私の後輩は、
取引先の男性社員──
佐竹さんに
やり捨てられたのだ。
佐竹さんとは
何度も何度も会って、
私もご挨拶をしていた。
確かに私は
自分の上司には疎かったけれど、
ビジネス上の
お付き合いのある
外の人を見間違えるはずがない。
「(え、あの、どうして)」
「(隣にいる女性、見えますか)」
「(え……)」
薄暗いけれど、
隣にいる女性が
佐竹さんと顔を寄せ合い、
楽しそうに
話していることはわかる。
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