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けれど桃さまが
「少々、お話が」と
低く告げると、
佐竹さんの顔色が
どんどん失せていったのが
わかった。
隣の女子高生はけなげにも
佐竹さんの腕に
しがみつきながら、
怯えた目で
桃さまと私を見比べ
立ち尽くしていた。
まだ子どもと言っても
おかしくない女子高生を
私に預け、
桃さまは佐竹さんを連れ
薄暗い通路に消えてしまった。
十数分ほどして、
桃さまはなぜか
ひとりで戻ってきた。
怖がる女子高生に
とりあえず家に
帰るように促し──
今に至る。
深呼吸のように
煙を吸い込んでは
吐き出しを繰り返し、
桃さまは
ふと私に気付いた。
「すみません、
待ちくたびれたでしょう。
お気になさらず、
一服してください」
「はあ」
.
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