生はまこと野放図に尽きる

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  そうは言っても、 桃さまの煙草は もう半分ほどに なってしまっている。 喫煙者とはいえ、 私はヘビーなほうではない。 「待ってますから。 なんならお付き合いしますし」 言うが早いか、 私の困惑を察した桃さまは 惜しげもなく 今吸っている煙草を 灰皿に落としてしまい、 新しいものに 火を点ける。 こうなっては 私も付き合わないと いけない。 早く帰るつもりだったのに、 と思いながら、 慎重に煙草を取り出し咥える。 桃さまのきれいで 大きな手が 私の眼前に差し出された。 「!?」 「どうぞ、お疲れ様です」 「……あ、 ありがとうござい、ます」 キラッキラの 銀色のジッポに 目を丸くしていると、 桃さまは慣れた手つきで ホイールを弾く。 現れた大きめの火が ゆらゆらと眩しい。 .
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