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おずおずと火をもらい、
むせないように
軽くくゆらせる。
使い込んだ
重めのいい音がして、
ジッポは桃さまの
コートポケットにしまわれた。
「いけませんね、どうも。
喫煙は品がなくなるから
やめろと、
さんざん言われるのですが」
「え……あ、でも、
持ち歩いて
いらっしゃるんですか……？」
「ほとんど吸わないんですが。
まあ、保険です。
精神安定剤のような」
「……なかなか
やめられないですよね」
普通の人と
普通の会話をしているようで、
少し気持ちがゆるくなる。
「あの……木枯さんは、
結婚はされないのですか」
「相手がいれば
考えますが、
どうにも……」
「ああ、ですよね。
仕事が楽しいと
そうなります」
映画が終わってから、
桃さまは
初めて小さく笑った。
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