生はまこと野放図に尽きる

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  いきなり結婚のことを 訊かれたことは 別に不愉快ではなかった。 さっき桃さまが たぶん折檻した佐竹さんが 既婚者であることから、 彼の中でなにか 思うことがあったんだろうと 思ったからだ。 戸惑うことがある時、 人は他人に価値観の すり合わせを求めたくなる。 まともな人間であるのなら、 相手はきっと誰でもいい。 「今日は失礼しました。 ひとりで佐竹に会うのが心配で」 「……佐竹さんが ここに来ること、 わかっていたんですか?」 「ええ」 桃さまは、 一瞬考えてから肩をすくめる。 同じシアターに 佐竹さんの姿があることを 教えてもらった時から、 不思議なことだった。 たぶん私がここへ 呼ばれたことと 関係があるんだろうとは 思っていたけれど。 .
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