生はまこと野放図に尽きる

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  その瞳の焦点が 私で合った瞬間、 人ひとりぶんスペースを 空けて立っているのに、 手首を掴まれたような 気がして、 思わず硬直する。 「言葉を選ばずに 言ってもいいですか?」 「ど、どうぞ」 桃さまの手は 灰皿カウンターに 乗せられたまま、 微動だにしない。 それなのに 視線で捕まえられるとか、 なにこの人。 普通に怖い。 「なんの役にも立たず、 むしろ他人の 迷惑になる人間が、 僕は死ぬほど嫌いです」 「……わかります」 言っていることには 完全に頷けるのに、 どうしてか全身が 拒否を示す。 この人と同じだと 言いたくないし、 思いたくない。 「こんな人は生きてても 仕方ないのになあと、 ひどく冷静に 思ってしまうんです。 ……自分の手で 殺そうとまではしませんが」 .
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