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「──で、
どうして杏なのかは
訊かなかったわけ?」
アイスクリームの蓋の裏を
ペロペロと舐めながら、
「ばかじゃないの」と
千佳が肩をすくめた。
私が久しぶりに
男と出かけるなんて
話をしてしまったせいか、
夜になって千佳が
急に訪ねて来たのだ。
玄関ドアを開けた瞬間、
「なんで、いるの」と
心の底から馬鹿にしている顔を
されてしまった。
そういう関係の人だろうと
なかろうと、
いきなりそんなことに
なるわけがないのに。
私はあの海外ドラマの
ヒロインではない。
些細なことに一瞬で高まり、
よく知りもしない男と
そのままパパッと
ベッドインしてしまうなんて
ありえない。
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