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うっかり心を許しでもしたら
戻れなくなりそうな、
ぽっかりと穴を空けた
桃さまのあの泥濘を
どう説明したものだろう。
「えー、あたしは
坂田だったらいいなあ」
アイスクリームを口に運び、
高校時代を
思い起こしているのか
天井を眺めながら
千佳は能天気な声で言った。
「お人形さんみたいに
可愛い顔してた坂田がさ、
30過ぎて老けててさ、
家庭の重さにちょっと疲れててさ、
んで仕事の疲れも
取れなくてさ、
溜め息混じりに
ネクタイゆるめながら
保健室にふらふら来てごらん。
……もう、
奥さんいてもいいから
あたしとご休憩していかない?
ってなるよね?
やっちゃうよね?」
千佳のすさまじい妄想に、
飲んでいたコーヒーを
垂れ流してしまいそうだ。
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