1029人が本棚に入れています
本棚に追加
「高校生の記憶と
大人の文化、
ごっちゃにしてない？」
「仕方ないじゃない。
今の坂田になんて
会いたくない！」
小娘のように頬を膨らませ、
千佳はツンと顔を背ける。
無駄に可愛い
その仕草は、
おそらく２６歳までだと思った。
親友である私の目からでは、
どうしたってこの子は
愛らしいんだけど。
「──わからないでもないけど」
言いながらフッと
小さく笑い落としたのは、
未だに恋に恋する
少女のような親友を
嘲ったからじゃない。
未だなにかを
諦めていない千佳が、
眩しく思えただけの話だ。
そこそこ痛手を
負っているはずなのに、
千佳は私が失った
なにかをまだ持っている。
.
最初のコメントを投稿しよう！