現代

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そして静かに、鬼庭良直、 隠居して左月斎と号した彼の墓に手を合わせる。 私が手を合わせると、静かに風が吹いた。 それはどこか穏やかで、優しい風で、 それを私は知っていた。 知っていたのだ。 その風の持ち主を、 その穏やかな空気を、 そして、そして…。 私は、手を合わせるのを止めて、 顔を上げて、左月斎の墓を見た。 そしてゆっくりと、その墓石に触れ、ゆっくりと撫でる。 私は、そして目を閉じた。
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