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良直の正室は、良直の一言に対して
産後の疲れた体を無理矢理起こして、頭を垂れた。
「そのようなことをするな。」
「しかし、良直様が、
男子を望んでいたのは、私はよく存じております。
私は、良直様が望んだことに対して応えることが出来ません。
申し訳ございません。」
深々と頭を下げる姿に、自分の言葉の重さを痛感する。
この頃は、まだ一族の家格というものを与えられてはいないが、
伊達家には、鬼庭という優秀な人材がいるというのは、
少しずつ知られてきていたところであった。
だからこそ、男子が欲しいと思っていたが、
女子は女子で、婚姻の際に良いところへ嫁ぎさえすれば、
生活はもちろんだが、その家の立場というものが向上する。
それにしても、五体満足で子供が生まれたことは喜ばしいことだと良直は思っていた。
産まれた赤子を抱き上げる。
「何と柔いものだ。これが子というものなのか。」
そういいながらも、良直の顔は笑っていた。
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