第1章 終わりの始まり

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ほの暗い空間に漂う一つの球体があった。 その球体は優しくも神々しい光を放ちながら語りかける。 「目覚めよ。」  たった四文字の言葉だが,ずっしりとした重圧さえ感じる。 「いつまで寝てるんだ。あぁ?また明け方まで残業したいのか?」 そんな言葉と共に頭に軽く痛みが走る。 その瞬間,不思議な空間は消えて行った。 どうやら先程の空間はこの物語の主人公である志波崎 祈(しばさき いのる)が見ていた夢の世界であった様だ。 祈は仕事の休憩中,先輩の上司に頭を叩かれて無理やり起こされた。 寝起きのぼーっとする頭で腕時計を見ると,休憩時間が終わるまでは残り20分も残っていた。 「チッ,また八つ当たりかよ・・・。まだ10分は寝れたのによ。」 そう心の中で呟く祈は,この言葉を決して口には出さず,上司に向かってへらへらと笑う。 「すんませんっ。起こしてくれてありがとうッス。」 いつも通り自分を隠し先輩を立てる様にそう言うと,心の中では溜息を吐いていた。
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