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「ねえ、藤野サークル決まった?」
「まさか。これで決まってたら奇跡でしょ」
「それもそうか」
K大学に入学したばかりの一年生、藤野莉月はいまサークル問題で頭を悩ませていた。
「ね、支倉はどこにしたの!」
「あんた、多分あたしと同じとこにしようって腹だろうけど無理よ。あたしフットサルに決めたから」
「ちっ……」
「舌打ちすんな、運動音痴のお前が悪い」
「それはそうなんだけど!」
藤野と話しているのは同級生の支倉里苑。藤野とは地元が同じだったという点がきっかけで意気投合した。
「あーいっそ私も運動できたらなー!くっそ十年くらい前に戻って、幼い頃の私に運動しとけって言っといてやりたい」
「過去を悔やんでどうする。とりあえず今どのサークルに入るかを決めろ。あ、これなんていいんじゃない?囲碁・将棋同好会」
「やだよ!第一囲碁も将棋もやったことないし」
軽口を叩きながら大学内を歩いていた時。
「ねえ!君もしかしてサークルまだ決まってない系?」
後ろから声をかけられ振り返ると、茶髪がかった髪を緩く巻いた可愛い系の人が立っていた。
「ねえ、よかったらうちに来ない?うち、レジャー・旅行研究会っていうのやってんの!そこのロフトで主に活動やってんだけど……見学どう?」
「え、わ、私ですか?」
「いや、お前以外いないだろ」
「そー、君だよ!君しかいない!さあ、見学へ!」
言うなり、茶髪は藤野の手を強く引いた。
「あ、ちょ!お願い支倉たすけて!」
「行くだけ行ってみれば?なんか楽しそうだし」
「この薄情者が!」
言ったが時すでに遅し。
藤野は諦めたように茶髪に引きずられていった。
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