45人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
私は、ちらっとその男を盗み見た。
やっぱり。
入館証も付けていない。
そして、努めて丁寧な言葉を選び、話し掛けた。
「あの、お客様。どちらの課に御用でしたでしょうか。これは、社員用のエレベーターで、お客様用エレベーターは、フロアを挟んだ反対側でございます。担当者がきちんとお見送り致しませんだったでしょうか?」
けれど、その男は私を見つめたまま返事もしない。
なに、この人!不審者…?
「我が社に入る時、入口で入館証を発行されたと思います。お持ちですか?」
その時、エレベーターが一階に着き、扉が開いた。
私は、すぐに警備員室に直行し、顔馴染みの警備員を引っ張ってエレベーターに戻った。
「どうしたんですか?蓮見さん。」
「今…ここに、入館証を持っていない怪しい人が…いたんですけど…。」
けれど、その場には男の姿はなくて。
何だったの…いったい!?
最初のコメントを投稿しよう!