2人が本棚に入れています
本棚に追加
この日講義が終わった頃、彩から電話があり、夜公園で会いたいと言われた。
この時の電話口の彩は、だいぶ落ち着きを取り戻しているようだった。
なぜ、公園に呼び出されるのか疑問に思ったが、彩は相談があると静かな口調で落ち着いて話していたため、僕は彩から指定された公園に足を運んだ。
僕が公園のベンチに座って待っていると、彩がやってきた。
彩は、思いつめたような表情をしていたが、僕の顔を見ると歩きながら話そうと言った。
彩と僕は、夜のライトアップされている公園の中を並んで歩きだした。
彩が、話を始めた。
「ひろくんは私に、たっくんが私のこと好きだと言ったよね。
この話をひろくんから聞いたとき、正直私はショックだった。
だって、私はひろくんのことが好きだから…」
想像もしていなかった彩の発言に、僕は驚いた。
(そうだったのか…)
僕は、彩の気持ちを知らなかったとはいえ、とんでもないことをしてしまったと思った。
彩は、続けて話をした。
「私は、悲しかったけど、でもしかたのないことだと思ったの…
それで、私のことを好きだと言ってくれた、たっくんの気持ちを大切にしたいと思って、できるだけたっくんに話しかけるようにしたの…
たっくんは、とても優しくて、たっくんと話をしている時は、とても楽しかった。」
拓也に対する彩の思いやりのある行動に、僕は胸を締め付けられる思いがした。
彩の話は続いた。
「昨日、たっくんにラブホテルに誘われたんだけど、私はまだたっくんが好きだという気持ちにはなっていなかったの…
でも、たっくんは強引で、たっくんが私のこと好きならいいかなと思ったんだよね。
少しお酒を飲んで、気持ち良くなっていたこともあって、たっくんに誘われるがままラブホテルに行って、たっくんに抱かれたの…
そして、ベットの上で2人で話をした時、たっくんに私のことどう思うか聞いたら、私のことを好きだとは思っていないと言われたんだよ。
私は、悲しかった!」
僕は、返す言葉がなかった。
せめて、僕が拓也の気持ちを知った時、僕が嘘をついたと彩に正直に伝えていれば、こんなことにはならなかっただろうと感じた。
彩は、拓也にもてあそばれたと感じているに違いない。
この時、僕の嘘は完全にばれたと思った。
最初のコメントを投稿しよう!