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そんなこと野上くんに真っ直ぐこっちを見て言われたら。…ああ、もう、心臓止まる。死にそう。
「その男の子もさ。自分がどうしてまりさちゃんに対してそんな風になるのか、ちゃんとはわかってないんじゃないかな。中学生男子なんてその程度のもんなんだよね、残念なことに。…はい」
野上くんの手がカップからドリッパーを除けて、その下から濃い褐色のコーヒーが現れる。
わぁ…。
「すっごい、いい香り…」
目を閉じて深く吸い込む。
「これで薄めなの?色もしっかりあるよ」
「薄めだけど、薄くはないからね。あと、香りは大事だから、そこはなるべくしっかり残るようにしてるよ」
コトリ、とソーサーが目の前に置かれた。
「はい、冷めないうちにどうぞ。最初の一口だけでいいから、ブラックで飲んでごらん」
「うん…」
カップをそっと持ち上げ、恐るおそる顔を近づけてふうっと吹いて冷ます。唇を縁につけると。
「…熱っ」
「急がなくていいよ。話しながらゆっくり冷まそうか」
野上くんは自分の手許のカップにもコーヒーを注ぎ(これはポットにまとめて淹れてあった通常のコーヒー)、ゆったり腕を組んで穏やかな目でわたしを見た。
「今はなんか、周りも自分もぎくしゃくしてて上手くいかないかもしれないけどさ。時間が経つにつれてだんだん他の男の子とも普通に話せるようになると思うし、まりさちゃんはあんまり気にしないでいても大丈夫じゃないかな。俺から言えるのはね、まりさちゃんは男の子たちに嫌われてなんかいないから、堂々としてればいいってこと。あとは学園マンガなんか嘘ばっかってことかな」
「やっぱそっか!」
思わずそこに反応する。やっぱりね、おっかしいと思ってたんだ。あとJCモテモテも都市伝説だと思う。
野上くんはおかしそうに明るく笑った。
「面白いね、まりさちゃんもマンガの中の楽しい健全な学園生活とか信じてたんだ。あんなみんな同じように楽しそうなんてことないでしょ。人それぞれだよ。同じ学校に通ってても、ひとりひとり全然違う景色が見えてるのが普通じゃないかな。ある人にはただ楽しい場所も、別の誰かにとっては悲惨だったり、過激だったり」
…健全な?…過激?
なんか知るのがちょっと怖い気もするけど。野上くん、本当にどんな中学生活送ってたの?
中学校に過激な要素なんか、いっこもないと思うけどなぁ…。
「そろそろ、いいかな」
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