コーヒーには早すぎる(あるいは、野上くんとわたし)

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クラス実行委員のもう一人が男子なのはわかってたけど、どうせコミュニケーション取れやしないしと思って、誰だか確認もしてなかった。 どこ見てるんだか、目が合わない感じで、でもわたしの前に立っていやにはっきりと言った。 「できることあったら言って。…やるから」 「ああ、まぁ、うん」 何と言っていいかいきなりのことで戸惑い、口ごもる。言うだけ言ったら、じゃあ、もまたね、もなく、田崎は唐突に去って行く。 …いや、手伝ってくれるんだったらさ。今でしょ。 紙拾うだけじゃなく、教室まで持ってけよ!これうちのクラスで配る分だから! 「…本当に気が利かないんだなぁ…」 心底呆れつつ、でもほんの少し心が軽くなったような。わたしはかき集めてまとめたプリントをもう一度丁寧に抱え直し、思いきり頭を上げて空を見た。中庭から見上げる青空は高い。 すごく高い。 雲ひとつない青を横切って飛行機が飛んでいく。すうっと綺麗に白の線がくっきりと引かれた。飛行機雲。 風は相変わらず強くて冷たい。わたしは目を閉じて、秋の気配の強い空気を胸いっぱい、思いきり吸いこんだ。 《完》
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