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セリさんが気を遣ってくれる。
「いや、大丈夫。中学生ってったってね、みんながみんな忙しいわけじゃないの」
特に部活もしてないしさ。
セリさんが胸の前で腕組みをした。
「試験前じゃなくても、勉強あるよね?宿題は?」
しまった、気を遣ってるんじゃなくて、プレッシャーかけてるんだったか。
わたしは肩を竦めた。
「ちゃんとやります」
適当に。
こういう時、セリさんってお母さんみたいだな、と思う。野上くんが来る前からセリさんはうちの父親の友達で、休みの日を一緒に過ごしたり遊園地に行ったりしたこともあった。なんとなく、セリさんがこのまま新しいお母さんになるんだろうなぁとずっと思ってたんだけどな。
上手くいかないものだよね。
「まりちゃん、いくよ~」
つむぎがどたどたと音を立てて店の奥に突進していく。その背中に野上くんが声をかける。
「つむぎ、飲みものとおやつは?」
「オレンジジュースとクッキー!」
即答。
野上くんがわたしの方に向き直った。
「まりさちゃんは?」
わたしは肩を竦め、答えた。
「…あたしもオレンジジュースで、お願いします…」
うーん、今回は引き下がろう。計画失敗。
次の機会を伺うしかないか…。
「そのセリさんてひと、そんなに美人なの?」
友達のミサヲちゃんが首を傾げた。今日は土曜日だけど塾の模試。中途半端な時間に終わるので遅いお昼代わりに、コンビニで適当に食べ物を買って公園でだらだら話して過ごしている。女の子ならアイスとかスイーツを食べながら恋バナが順当なところだろうけど、わたしもミサヲもからあげクンとおにぎりとカツサンドである。現実はそんなもんでしょ。育ち盛りにはそれでも物足りない。家に帰ったらおやつも食べようっと。
あたしも考え考え、咀嚼したあと答える。
「うーん、どうなんだろ。よく見ると、顔立ちは割と綺麗なんだけどね。飾り気がないっていうか、とにかく全てがスパッとしてる。女おんなしたとこがないっていうか。化粧もしてるかしてないかってくらいの薄化粧だし」
答えながら母親のことを思いだした。うちの母はアパレル会社勤務だけあって、なかなか華やかなフェミニンな感じのひとだ。見た目も年齢より全然若いし。その母に、セリさんの薄化粧の話をうっかりしたら、何でか逆上してたことがあったな。
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