コーヒーには早すぎる(あるいは、野上くんとわたし)

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「はぁ~…」 何故かミサヲはしみじみと感じ入っている。 「なるほどねぇ~。にっこり愛想振りまいて、好感度あげるばっかりがモテへの道ってわけでもないんだ。時にはクールに突き放してみるのも効果があるのかもね。奥深いなぁ…」 何感心してんだ! 「なんなのミサヲちゃん、モテたいんだ?」 「いやそりゃそうでしょ!マリリン、モテたくないの」 「え~…」 上目遣いになってちょっとだけ考えてみる。モテって、不特定多数の異性に好かれることだよね?(てか、その定義で言うと、厳密にはセリさんのいる状況も『モテ』ではないけど。野上くんとうちの親父は『不特定多数』ではない) …あんまり想像の及ぶところではないけど、なんか鬱陶しそうなイメージだなぁ。 「いや、うーん…。遠慮しとくわ…」 「マリリンくらい綺麗なら、モテたくなくてもモテちゃうよ」 ミサヲは他人事とばかりに平然と言う。 「綺麗じゃないよ。モテたことなんて…、まだ誰かから告白されたこともいっかいもねーし」 普通はモテる子なら、中学生になれば下駄箱にラブレターが溢れるんでしょ?いや、要らないから別にいいんだけどさ。 ミサヲはうーん、と唸って腕組みをした。 「そうなんだよねぇ。あたしも、中学生になったらマリリンの下駄箱、絶対ラブレターが雪崩のようにダダーッと出てくると思って楽しみにしてたのに」 「ごめんね期待を裏切って」 わたしは要らんけど、ミサヲの楽しみを奪ったのは不甲斐なく申し訳ない。 「うちの学校の男の子たち、ガキっぽいのかなぁ。それともあーいうのって、学園マンガとかのなかだけの話?」 口を尖らせて不満げなミサヲをあたしは宥めた。 「いや、単にあたしがモテないだけだと思うよ?うちの学校だって、誰か他の人の下駄箱から溢れてるかもしれないよ、ラブレターの雪崩。あたしたちが知らんだけかも」 「そうかなぁ?なんか全然そんな気しないんだけど」 しきりに首を捻るミサヲ。 わたしはその隣でカツサンドを齧りながら、気づかれないようにこっそりため息をついた。 セリさんの魅力、かぁ…。 洗いたての白い綿シャツみたい。 実はわたし、聞いてみたことがあるんだ、野上くんに。セリさんの何処が好き? 今よりずいぶん子どもの頃。確か小学五年生とか、せいぜいそのくらいだったと思う。
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