調査報告書

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 ビル中にある銀行で起きた事件は、未だに犯人は見つかっていない。  スタンガンによるショックにより意識昏倒。倒れたあと頭に傷を負ったことが皮肉の決定打となった。  解剖結果で薬物混入も発覚していることから犯人は計画的に山之内春彦を狙ったことが伺える。  それが検視の結果であった。 「その後の調査で、害者は銀行に入る以前から意識がおかしかったと証言がとれています」 「カルビ三枚、牛タン二枚」 「あの、須田さん。話聞いてますか?」  ここは焼肉屋。事件発生から四日。須田がそんな事件の第一発見者と聞いたとき、嫌な予感がしていた。 「飲み放題、ノンアル上から持ってきて」 「話、続けます。被害者は山之内春彦。精神疾患を煩い、近隣の特別養護老人ホームで生活を続けていたそうです」 「さすが炭火焼き、炎が立ち上って眼鏡が曇る」 「手布巾で拭いてください。続けます。また、その日の山之内の行動は不可解で職員の目を盗んでホームを抜け、通帳を握り締めたまま銀行へ向かった模様です。監視カメラに山之内の様子が映っていました。顔も青ざめ足もふらついていて――」 「いつ倒れてもおかしくない状態だった」  須田が眼鏡をかけ直す。
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