第1章

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「読んでほしいのはね、ここなんですよ、ここ。」 手元から『新聞紙』の声が這い上がってくる。『彼』は目線をそちらに向けまいとしたが、「ちゃんと見てください」という声がしたかと思うと何かおかしな力が首に加わって、そちらを強制的に向かせられた。 「あなたのインタビュー内容が載ってますね。読みますよ、見えますか? 『彼とは仲のいい友人だった。よく遊んでいたので悲しい』とありますね。」 固定された首が、さらに無茶に回されてその文言が見えるように新聞紙の正面を向く。 確かに書いてある。一言一句違わず。 それもそのはず、確かに『彼』はクラスメートに対して行われたインタビューでそう答えた。ご丁寧に涙まで流して。 「おかしいですねぇ」 『新聞紙』はそう言うとゲラゲラ笑った。心底人を見下したような笑いであった 「僕の自殺の原因はあなたですよ?覚えてますか?校舎裏で僕を裸にして金属バットで殴りましたね?倉庫でリンチしたあげく金を奪っていきましたね?河川敷で顔を水に突っ込ませて窒息寸前にまでしてましたね?覚えてないんですか?」 『新聞紙』の口が断末魔の芋虫の如くぐにゃぐにゃと動き、『彼』にそんな風に畳み掛ける。 『彼』は『新聞紙』から目線を反らしたくて仕方なかったが、 自らのそんな意に反して『新聞紙』の張り付いた右手は、鼻と紙面がくっつくまでに接近させられる。 「いいえ覚えていないわけがないですね、だからこそあなたは今日この教室に戻ってきたんです、僕が死ぬ前の日もあなたは僕を傷つけていましたこの教室でカッターナイフの先端を僕の爪に差し込んで遊んでました、違いますか、だからあなたは今日この教室に来ましたね、ご自分のしでかした痛恨のミスをカバーするためです、それはなにか、まさか僕が自殺するなんて思っていなかったあなたはまた同じように遊ぶために件のカッターナイフを自分のロッカーにしまいました、ところが今日見つかった僕の遺書にはいじめの証拠として僕の血のついたカッターナイフがしまってあるロッカーがあると書いてあります、いや書きました、そしてどういうわけかその遺書はマスコミにリークされました、そこで事が露見することを怖れたあなたは証拠隠滅の為にこの教室に来たそうでしょう?」
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