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その時『彼』はようやく恐怖の叫び声をあげることができた。
『新聞紙』の言っていることはまるまる図星であり、
誰も知る筈の無いその事を知っているということはつまり、その『新聞紙』が自分がイジメぬいて殺してしまった相手の、怨念か亡霊か何かそのようなものであるという事で。
頭がそれを理解に漕ぎ着けさせたとき、
ついに喉と肺の緊張を、恐怖が追い越したのだった。
新聞紙の高笑いが響く。
「何も叫ばなくても。どうせ誰も助けに来ないですよ、僕はあなた以外には見えませんし聞こえませんからねぇ。
いやね、僕はそんなあなたを呪い殺しに来たとか、たたりに来たとかそういうんじゃないんですよ。
ただ、生前の恩を返しに来たっていうのかな……ほら、よく遊んでくれたじゃないですか、この記事に書いてある通りに。
あれでしょ?僕は辛くてまぁ文字通りに死ぬくらいの苦痛を味わっていた訳ですけど、つまりあれはあなたにとっては遊びだったわけだ。
いやぁ合点がいきましたね。僕がそう感じていなかっただけであれは実は遊びだったんですね。はやとちって死んじゃいましたよ、僕はドジです」
『新聞紙』はそれを最後に下から燃えて焦げ落ち、その紙片を四散させて沈黙した。
『彼』は、ひぃ、と1つ声をあげたが、それが燃え尽きると辺りはもとの暗闇と静寂に包まれ、物音ひとつしなくなったので、
終わった、と思い、
和太鼓の演奏みたいに早鐘を打つ鼓動のなか、久方ぶりに安堵の息をついた。
が、今度は背後から声がする。
「落ち着かないで、こっちです」
『彼』の本能は、反射的に振り向かないことを選択して、目と耳をその場でふさいだ。
が、またもや勝手に体が動く。
強制的に振り返らされた視線の先に、
しまっていたはずなのに開いているドアと
それを塞ぐように立つ『新聞紙』………いや、『いじめられっ子』が立っていた。
学ラン姿で満面の笑みを浮かべている。ただし、首には麻縄のあと、制服ボタンはかきむしったように所々外れほつれ、
右手には件のカッターナイフが握られている。
「なぁに、簡単な事です。
僕は、よく遊んでくれたあなたに恩返しをしに来ました。」
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