第1章

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不思議な力をのみこんだ男の人と、心優しい女の子。 賑やかな街並みをぐっと奥に進んだところに、ふたりが経営する小さなお店が佇みます。 レンガを積み重ねたあたたかな色合いの店のドアを開けると、ほの明るい店内をやわらかな笑顔の女の子がご案内。 彼女の名前は美重 花心(はるがさね はなこ)。 変わった名前ではあるけれど、ごく普通のかわいらしい女の子です。 店内をぐるりと見渡すと、ふかふかのソファと小さなテーブルが一つずつ。奥には小さなカウンターとそのまた奥にドアが一つ。 クリーム色の壁に、小さな木枠の窓。 たった一人の店員の美重さんがあなたをソファに促し、奥のドアから出てきた眠たげな男の人を振り返ります。 彼の名前は聖月 奏良(みづき そら)。 ふわふわの黒髪に、白いシャツ。無地のエプロン。 店長である彼自身はとっても眠たそうだけど、どこか雰囲気にまとまりができます。 ここは《花心屋》。 小さな小さな、だけどとびきり不思議な花屋。 聖月店長の〝咲かせる〟花は、お客さん一人一人の心を癒す不思議な花。お値段は少々高め。 ここで買った花を枯らさずに1週間育てると、必ずその人の心を助けてくれるのです。 聖月店長はまるで魔法のようにその花を咲かせます。 まず美重さんがお客さんとじっくり話し、その様子をみた聖月店長が、お客さんのことを精一杯イメージして、その人に合った花をふわっと咲かせるのです。 聖月店長がこの不思議な力を最大限に活かすためには、美重さんの存在が欠かせません。 彼女の優しい心が、聖月店長を支え、花の力だけでは癒えぬ所のお客さん自身の癒しともなるのです。 そうそう。お店の名前は、そんな彼女を想って聖月店長が付けたんだそうですよ。 ふたりで一つ。毎日お客さんの心を癒すのみの変わったお店。 ……彼らの力が信じられませんか? ほら、今からはあなたが目にする番です。 彼らの力がうみだす奇跡のような花を。 「こんにちは。お客さん」
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