プロローグ

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「あ、東上さん。おはようございます」  昨日引っ越してきた獏川だ。 「あ、獏川さん、昨日はご丁寧にありがとう」  オレは極力、丁寧に言って返した。 「いえ、大した物では、では、いってまいります」  獏川は、丁寧にお辞儀をして、歩いて行った。 「はぁ、いってらっしゃい」  オレは、なぜか、獏川を送り出すことになってしまった。今日は、燃やせるごみの日なので、ゴミ捨てに出た時に、出会ったのだ。 ――研究所の所長は、みんなあんな感じなのか? まあ、別に気にすることもないだろう。陰気臭い方がイヤだからな――  オレの部屋は、このボロアパートの二階の端部屋、隣は獏川で、下は大家の野口だ。――いつ見てもボロイな―― そろそろ、引越しも考えたいのだが、家賃は安いし、生活するのには便利な場所だ。無理に引っ越すこともない。――さて、そろそろ、オレも出かけるかな―― ひとつ背伸びをして、軋む階段を上がり、部屋に戻った。
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