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プロローグ
『コンコン』
――…ん? 誰だ――
「ごめんください」
東上は、怠惰な休日の邪魔をされた。――仕方ない…。―― 玄関を開けてみると、ネズミのような顔をした男が立っている。
「私、今日、お隣に引っ越してきました。こういうものでございます」
名刺を渡されたが、見た振りをして見なかった。
「東上です。よろしく」
オレは軽く頭を下げる。
「あ、こちら詰まらないものですけど、どうぞ」
右手に持っていた手提げを渡された。
「あぁ、どーも」
ティッシュの5箱パックをもらった。
「今後とも、どうぞよろしくお願いします」
この男、やけに丁寧に頭を下げる。物腰が柔らかい。人当たりがやけにいい。
「あ、いや、こちらこそ」
あの男、――異様に礼儀正しい人だ―― と思った。もらったティッシュを床に置いて、名刺を見てみる。『超科学研究所 所長 獏川進三郎』と、あった。――時代劇俳優みたいな名前だな―― と、オレは、なんとなく思った。――超科学研究所? なんだそりゃ―― その時は、その程度の事しか思わなかった。
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