第1章

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 騒がしい喧騒から逃れ、アイバンは丘の上に来ていた。  見下ろすと、幾つもテントが群がり、そこで働く多くの下男に混じり、軍馬や甲冑姿の騎士がいる。  物々しい武者どもは、明暗がはっきり分かれていた。  つまりそれは、勝者と敗者だった。  彼らは、晴れの舞台、馬上槍試合に集まって来た猛者たちだった。  そして、アイバンのライバルでもある。  テントには、それぞれの家名を表すエンブレムが掲げられ、篝火が明々と照らしていた。  それは、各騎士が目立とうとしていると言うのもあったが、それとは別に、実用性のある理由もあった。  馬上槍試合では、勝者が敗者の甲冑、並びに装備品を取る事ができる。  そして、大抵の場合は、獲られた装備品を買い戻しに来る。  何故なら、装備品自体が高価な物ではあるし、第一、自分の甲冑を着て試合に出られるのも恥ずかしい。  つまり、かなり相手に吹っ掛けられるので、これが、賞金以上に稼ぎになるのだ。  当時は、戦争で人質を取って、後で身代金を請求して稼ぐのが当たり前の時代だったから、同じルールが馬上槍試合にも適用されていた。  
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