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アイバンが丘の上から眺めていると、騎士の野営地に、一人の小間使いが入り込んで来ていた。
小間使いは、供も連れずに歩いていて、かなり危なっかしい。
つまり、野獣たちの真ん中を、若い女性が通過しようとしているのだから、放って置けない気がしていた。
アイバンは、馬の脇腹に合図を送ると、丘を降りて行く。
丘から降りると、アイバンの不安は的中し、小間使いは男たちに絡まれている。
彼は「ほらほら、一人歩きなんかするから」などと思いつつ、現場へ急行しようとした。
小間使いを囲んだのは、下男か従者か下働きか? とにかく、黄色い歯と血走った目の男たちだった。
小間使いは若い女性で、夜目にも解る美形だったので、絡むなと言う方が理不尽かも知れない。
男たちの手が伸びると、小間使いは身を翻し、地面に叩きつけた。
その妙技は、魔法か妖術のようで、目撃したアイバンは目を丸くする。
その後も、小間使いは男を投げ続け、まるで何かのショーのようだった。
アイバンは、小間使いの妙技に感心する。
どうやら、相手の力を利用して投げる秘術のようだった。
東洋の遥か遠い国には、小男が大男を倒す秘術があると聞く。
だが、小間使いは、本気で男たちを怒らせてしまったようだ。
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