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「なぁ、俺が一週間前にピアスし始めた時はそんなこと言わなかったよな? 髪短いからよく見えるはずなのに」
「部長はまだファーストピアスでしょ。その飾り気もない透明のプラスチックに対してカッコいいとか自分もしてみたいとか、そういった感情を抱けるわけがないじゃない」
「藤江、ひでぇ」
美人でふうわりとした笑顔の似合う藤江先輩は、意外とさばさばときっぱりと喋る。特に部長に対してはきっぱりの度合いが上がる気がする。その口調のため、先輩の印象はそこまで背が高くないにもかかわらず『美人でかわいい』というよりは『美人でカッコいい』となる。
「それで菅野君はピアスしてみたいの?」
「うーん、どうだろう……」
藤江先輩を見て、いいなぁ、意外といけるかもしれないなぁと思ったけど、自分がというのはあまり考えてなかった。
俺が考え込んでいると、藤江先輩がじーっとこちらを見てきた。……美人に真顔で凝視されてしまうと、なんだか緊張する。
「な、何ですか?」
「いいんじゃないかな」
「え?」
繋がらない会話に、思わず問い返すと、藤江先輩はにこりと笑って言葉を付け足した。
「菅野君はピアス、似合うと思う。耳の形がきれい。それにごてごてアクセサリーするタイプでもないから、そういうワンポイントはいいんじゃないかな?」
……藤江先輩にそう言われると、思わずいいんじゃないかなって気になってくる。制服姿しか見たことがないから、そんなに感じたことはないが、藤江先輩は間違いなくオシャレだと思う。クラスでいかにも『オシャレしてます!』とオーラが語っている女子たちは、制服をこれでもかと着崩して、化粧が濃くて苦手だ。そんな女子達とは対照的な印象を纏いながら、それでいて、ダサさがない、垢ぬけなさがない。上手くは言えないが、『オシャレしてる!』という意気込みを見せないながら、十分オシャレというか……。俺が先週から付き合いだした、篠原とは印象が似てるかもしれない。篠原はでも美人というよりかわいいだけど。無防備にへらりと笑う姿がかわいい子だ。
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