ピアス

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 まぁ、それはともかく。 「……いいと思います?」 「うん。部長もそう思うでしょ?」 「あぁ、いいんじゃね? 菅野、最近身の回りに気を配りだしたから、ピアスだけ浮くってこともないだろうし」  流石、美術部というか、二人とも審美眼については結構シビアなので信用できる意見だ。 「こういう時、うちの学校のユルユルの校則が嬉しいよね」 「校則なんてないようなもんだろ。『学生らしい、清潔な身なりをしましょう』のどこが校則なんだよ」  二人が言って笑うとおり、うちの高校は服装検査も持ち物検査も一切ない。髪を染めてても、ピアスをあけても、化粧をしていても何も言われない。それでも、ある程度のところで収まるのは曲がりなりにも進学校というところか。  オシャレに関してはしっかりしている先輩二人に勧められて、しかも環境は整っているとなると、好奇心がむくむくと身をもたげ始める。 「ピアスってどうやって開けるんですっけ? 自分で開けるのって安全ピンとか?」  それは流石に怖いからやだな。でも病院っていうの高いだろうしな。そう思ってるのが分かったのか、先輩二人がそろって笑う。部長の方はげたげたと声を上げて笑い、藤江先輩は口元に手をあててくすくすと声を抑えて笑った。 「そりゃあ安全ピンってのが一番安いぞ。そうするか?」  意地悪くそう言ってくる部長にむっとして言い返そうとしたら、反対側から藤江先輩が説明してくれた。 「ピアッサーっていう機械がアクセサリーショップとか、雑貨屋さんで売ってるよ。それだと自分でも簡単に開けられる」 「へぇ、そんなのあるんだ。先輩もそれで開けたんですか?」 「うん。鏡見ながらパチンって。実は部長のも私がやったんだ」 「こら、藤江! それ、内緒って約束したろうが」 「あら、そうだったっけ? ごめんね」  慌てる部長に俺も思わず笑うと、近くにあったスケッチブックで叩かれた。部長は軽くやったつもりだったのだろうが、絵具の乗った画用紙は意外と重さがあって、地味に痛かった。 「安いのだと八百円くらいだったかな。ただ、衛生上の問題で一回しか使えないから、両耳開けるんなら倍かかるけどね」  高いと言えば高いが、十分に手の届く範囲内だ。 「病院行かなくっても、全然大丈夫なんですね」
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