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向学心があるというか、いつでも前向きな彼女は、僕が出かける時には何処にでもホイホイ付いてきて、しかもビールを呑みながらのたわいのない会話までメモを取る勢い。
こんな姿には、初めてできた後輩が少しずつ可愛いく感じるようになってきていた。
そしてこいつを大切にしなきゃと、末っ子である僕に妹ができた、そんな気がしていた。
その持ち前の明るさで、沙希は眩しい笑顔を振り撒きながら、相当にシックな洋館作りの僕の職場に華やいだ風を吹き込んだ。
しかし、大学の研究室の下請け的なこの職場に自ら希望して来るものはいない。そんな所になぜ彼女が来たのか、或いは来ざるを得なかったのかは不明だ。
ある噂によると、大学院の教授と男女絡みの問題を起こしたらしいという噂が伝わってきた。だが、多少なりとも彼女を知る僕には、これは全く信じられない噂で、大体沙希には色気どころか、女を感じることさえ難しいようなキャラだった。
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