2人が本棚に入れています
本棚に追加
「おい!何が……」
言いかけて、彼は言葉を失った。
小さな洞窟のある斜面の近く。
彼らが陣取った場所に、間違いない。
だが、目の前にに広がるのは赤い世界――。
おびただしい量の鮮血で、一面が血の海と化していた。
そしてその中に一つだけ、ぽつんと浮かぶ黒い染みのように、細身の男――彼の仲間の一人が、背を向けて立っている。
「……他の奴らは、どうした?」
しかし、返答はない。
「……何が、あったんだ――?」
もう一度、問い掛ける。
すると、男は振り返り、赤く濡れた口元に微笑みを浮かべながら答えた。
「……『食事』をしただけ、ですよ」
これが、全てのはじまりだった。
最初のコメントを投稿しよう!