悪夢の欠片

3/3
前へ
/3ページ
次へ
「おい!何が……」 言いかけて、彼は言葉を失った。 小さな洞窟のある斜面の近く。 彼らが陣取った場所に、間違いない。 だが、目の前にに広がるのは赤い世界――。 おびただしい量の鮮血で、一面が血の海と化していた。 そしてその中に一つだけ、ぽつんと浮かぶ黒い染みのように、細身の男――彼の仲間の一人が、背を向けて立っている。 「……他の奴らは、どうした?」 しかし、返答はない。 「……何が、あったんだ――?」 もう一度、問い掛ける。 すると、男は振り返り、赤く濡れた口元に微笑みを浮かべながら答えた。 「……『食事』をしただけ、ですよ」 これが、全てのはじまりだった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加