「裏抱きたい男」響希side 1

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「ティナだって、」と言いかけて、俺は言葉を切った。 彼女の心の傷は、移民とは無縁の国で生まれ育った俺にとっては、一生かけてもわかりえないことだ。 アルコールのせいか、試合に負けたことを共に嘆こうとしない俺のせいか、潤んだ瞳を向けるティナ。 今夜の俺を怒るのは、単純な試合の勝ち負けだけじゃない気もする。 「NYに来たらNYらしい生き方をしたほうが得策じゃないか、ティナ」 方向を変えて放った言葉に、ティナは唇を尖らせて、文句をポロポロと溢した。 ティナの後頭部を優しく撫でると、子猫のような猫なで声を出して甘え始めた。
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