1人が本棚に入れています
本棚に追加
「おじさん。だれ?」
優しく笑って、おじさんが近づいてきた。そして僕の頭を優しく撫でてくれた。
触ってもらうのも久しぶりだった。嬉しくてぽろっと涙が出た。
パパよりちょっと歳をとったくらいのおじさんは、近くによると何だかいい匂いがした。嗅いだ事もないようないい匂い。
「おじさんはね、覚えてるわけないか。小さかったものね。でもねりょうくんが助けてくれたんだよ。おじさんのこと。ありがとう。だから、おじさんが迎えに来たんだ。君を待ってる人がいるよ」
そう言うと、右手を出して僕の左手と手を繋いでくれた。
手を繋いでもらったのも、こんな風にほっとしたのも、とても久しぶりでぼくは一粒だった涙が、たくさん溢れて止まらなかった。
おじさんは、そんな僕の手を引いて真っ白な中を迷わず進んでいく。
しばらくすると、霧が晴れて広い広い草むらに出た。
見たことある気がする。でも、どこだっけ?
大きな木が一本生えていて。たくさん葉っぱを茂らせている。
その根元にテーブルとイスがあった。
おじさんはそこを目指して、ゆっくりと僕に合わせて歩いてくれた。僕の涙はもう止まっていて。
おじさんは手をそっと離し、僕の背中を押した。
「いっておいで。会いたかった人に会えるよ」
優しくニッコリ微笑むとおじさんは、ゆっくり僕から離れていった。でも、どこも影になるところもないから、顔が笑ってるのがわかるくらいのところで立ち止まって僕を見ていた。
テーブルとイスのところまで、おっかなびっくりで近づいた。
木で出来たテーブルは四角くて、イスは四個あった。
そのひとつに腰掛けて、僕は足をぶらぶらとさせてみた。
すると、後ろから肩をポンと叩かれた。
「久しぶりだね。りょうちゃん」
ずっと聞きたかった声だった。
「パパ!!」
振り返ると、パパが笑っていた。
隣にはママと、ちょっと恥ずかしそうにしたお姉ちゃんが居る。
僕はイスから飛び降りると、みんなに飛びついた。
「会いたかったんだよ!どうして?!どうして僕を捨てたの?!」
僕はワンワン泣きながらみんなに縋りついた。
パパもママも、お姉ちゃんも泣いていた。
そして痛いと思うくらいみんなが囲んで抱きしめてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!