二幕 ④最強と最狡の出会い

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 「河南尹(かなんいん)の………」  王蝶が呟く。それを聞いて、張蝉もやっと理解したかのようにギョッとした。  河南尹とは、この洛陽を含めた河南郡の統治者ではないか。  「そんな人が、なんで」  こんな場末の路地裏には似つかわしくない、高貴な人間だ。  「要求はなんだ」  丁布の問いかけに、袁術が満足げに微笑む。  「話が早いの」  「わざわざ、おれたちが囲まれたのを、その時点で助太刀するわけでもなく見ておいて、試しに一人逃がしてみりゃ、わざわざ討ち取って見せびらかしてくる」  丁布の言葉に袁術は笑みを深くする。  「おれらに恩を売って、何をさせたいんだ」  丁布が睨みつけてくるのを、袁術は嬉しく思った。  「さすがは丁騎都尉殿の息子だの。良い眼じゃ。お主には国家の大事のために動いてもらいたいんじゃ。近々行う策にどうしても、札が一枚足りん。その一枚に、お主がなってほしいんじゃよ」
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