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「ちょっと!」
そこで、傍観者となっていた者の声が割って入る。
「河南尹様だかなんだか知らないですけど、そんな言い方あります? チョウちゃんは奉先くんの友達だよ!! 貴女が何者だろうと、そんな言い方はさせない! 許さない!! チョウちゃんと、奉先くんを、私の友達を、侮辱するな!!」
張蝉だった。
袁術の不思議と確信を持った言い方を、震えながら聞いていた、王蝶の前に立ちはだかり、鋭い目を、袁術に向ける。
「わかっておる」
それに対して、袁術は申し訳なさそうに返した。
「済まぬがの。時間がないのじゃ。こうしてお主に接触できるのは、今この場だからこそ。お主が帰り、父上殿に裁可を仰いだ時点で、計画が露呈しかねない。そんな相手と、妾はことを構えておる」
丁布は絶句する。
そんな嘘みたいな相手が、いるものなのか。
「どちらにせよ、これか失敗に終われば、後漢は無事では済まぬ。お主の父上殿のいる場も、脆く崩れさる」
袁術は目をカッと見開いた。
「わかるか。この選択は、お主が選び取った者たちも巻き込んだものなのじゃ! 生きている限り、自分の意志がないなどと、そんな甘えは通用せん!!」
「………っ」
「お主の力を買してくれ。お主の力を余すことなく発揮できる場を提供すると約束する。猛者と戦えるし、軍も率いれる。父上殿が心配か? なに問題あるまい。あの『風読み』の丁建陽(けんよう)殿であれば、後漢さえ残れば、波が高かろうと泳ぎきるじゃろ」
袁術の言葉に、誰もなにも返せない。
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