183人が本棚に入れています
本棚に追加
/516ページ
一八四年、三月十六日。
張曼成、韓忠、趙弘が進軍を開始したその日。
とある場所で、二人の男女が盤上に駒を並べながら向かい合っていた。
盤上に駒を並べて遊ぶ遊びを盤上遊戯と言い、古くは古代インドのチャトランガを起源として、チェスや将棋といった様々なボードゲームへと発展を遂げていった。そして後漢でもチャトランガをベースとして改良された遊び、『シャンチー』が普及していた。
パチリ。パチリ。
しかし、この狭い部屋で展開されている遊びはそのシャンチーとは様相が違った。
駒の数が圧倒的に多く、種類にも偏りがある。白と黒に分かれた駒はいくつかの文字が書かれている。歩、馬、弓、将、王。しかし、黒駒には歩と将、王の駒しかなく、白駒には全てがそろっている。代わりに黒駒は数が多く、白駒の三倍にもなりそうなほどだ。
五種類の駒は盤上に配置されているが、それもかなり不自然に置かれている。
「………たぁ。この駒、どこ?」
「んー? この辺だと思うぞ。っと、さて、こんなもんでいいかな?」
「ん。いい、と思う」
「おし、始めるか」
「ん。先手一手、張角、病原、発見」
「後手、パス、だな」
「ん」
最初のコメントを投稿しよう!