幕間 その四 死国志演義

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 一八四年、三月十六日。  張曼成、韓忠、趙弘が進軍を開始したその日。  とある場所で、二人の男女が盤上に駒を並べながら向かい合っていた。  盤上に駒を並べて遊ぶ遊びを盤上遊戯と言い、古くは古代インドのチャトランガを起源として、チェスや将棋といった様々なボードゲームへと発展を遂げていった。そして後漢でもチャトランガをベースとして改良された遊び、『シャンチー』が普及していた。  パチリ。パチリ。  しかし、この狭い部屋で展開されている遊びはそのシャンチーとは様相が違った。  駒の数が圧倒的に多く、種類にも偏りがある。白と黒に分かれた駒はいくつかの文字が書かれている。歩、馬、弓、将、王。しかし、黒駒には歩と将、王の駒しかなく、白駒には全てがそろっている。代わりに黒駒は数が多く、白駒の三倍にもなりそうなほどだ。  五種類の駒は盤上に配置されているが、それもかなり不自然に置かれている。  「………たぁ。この駒、どこ?」  「んー? この辺だと思うぞ。っと、さて、こんなもんでいいかな?」  「ん。いい、と思う」  「おし、始めるか」  「ん。先手一手、張角、病原、発見」  「後手、パス、だな」  「ん」
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