第10話【Lv.7の抵抗】

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魔法を解くには、吸血鬼を倒すか、張られた透明な壁をぶっ壊すしかない。 「どういう事だよ、だって? おいおい、当たり前の事聞くなよ……」 吸血鬼は邪悪に満ちた声で言い、人溜まりになっている出口へと足を進める。 そして手に浴びた血肉をゆっくりと舐め、口角を吊り上げた。 「つまりお前らは死ぬって事だよ」  ☆ 「───失礼しまーす!」 166番で呼ばれ女性は間延びした声と一緒に白い手でノックをし、部屋に入る。部屋の中には看護師が2人と、黒い軍服で腰に剣を垂らした髭面の男性がいた。 「おっ、あんたが『一隻眼』さんで?」 こちらを品定めするように見据える威圧的な男性と目が合い、女性は尋ねた。 「ああ。俺が『一隻眼』で間違いないよ。では早速始めよう」 単調な声で話を進める『一隻眼』こと最上ヤスユキ。 彼にとっては幾度も行ってきたレベル測定は、もはや退屈な作業でしかない。 今日は恐らく1000に近い人数は測定するだろうから、受検者との会話も適当な相槌だけで行い流れるように作業をし、早く次の受検者を呼ばなければならない。 「その水晶に手をかざして少し魔力を込めるだけでいい」 「あ、待ってくんない? あたしにも自己紹介させてよ。クラスレジェンドになんか滅多に会えるもんじゃないしさ」 ただの会話だからと思い、最上ヤスユキは「はいどうぞ」と素直に頷いて話が流れるのを待つ。 「えーっと……コホンっ。あたしの名前は焉藤シュウカ」 焉藤シュウカと名乗った女性は、言われた通りにテーブルに置かれた水晶に手をかざし、魔力を込める。すると、水晶が怪しく光だした。 看護師2人はその水晶の反応の異質さを見抜き、慌ただし見せ始める。 透明だった水晶はやがてドス黒い色へと変色し、風船が膨らむような膨張を見せ、爆発した。水晶の破片が辺りに飛び散り、看護師2人が悲鳴を上げて身を屈める。 「へへっ……」 焉藤シュウカは看護師2人をあざけ笑うように見下してから、全くの平静を保つ最上ヤスユキに狂気に満ちた瞳を向け、言った。 「あたし、あんたの命を貰いにきたんだよね」 「へーそうか」 殺気を当てられていると言うのに、最上ヤスユキの表現に変化は無い。それどころか、看護師2人に裏に逃げるよう指示する余裕っぷりを見せた。
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