第11話【始動する異端児の力】

1/16
前へ
/1047ページ
次へ

第11話【始動する異端児の力】

少女は走る。銀色に伸びた長髪を揺らしながら。 少女は蹴る。大空を。 少女は足を動かす。がむしゃらに。 その少女にとって、空を駆けるのは造作もない事だ。まるでそこに足場があるかのように虚空を蹴り、身体を一直線に飛ばす。無我夢中に、ひたすら駆ける。 少女にはあの光景が見えていた。否、今も尚見えている。 少女にとっては、自分の手を眺めるくらいの感覚で鮮明に見えるのだ。見えるのだけれど、手が届かなければ意味がない。 イサメだったらもっと速く走れるのに。ナイトだったら一瞬で移動できるのに。 少女は血が滲むほど唇を噛み締め、自分の無力さをただただ恨んだ。 だが、あと少しで目的の場所に着く。もう少しだ。 鮮やかに光る髪が空に虹を架ける。 「ダリアぁ……!」 少女は一段と速さを増した。
/1047ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26891人が本棚に入れています
本棚に追加