26891人が本棚に入れています
本棚に追加
第11話【始動する異端児の力】
少女は走る。銀色に伸びた長髪を揺らしながら。
少女は蹴る。大空を。
少女は足を動かす。がむしゃらに。
その少女にとって、空を駆けるのは造作もない事だ。まるでそこに足場があるかのように虚空を蹴り、身体を一直線に飛ばす。無我夢中に、ひたすら駆ける。
少女にはあの光景が見えていた。否、今も尚見えている。
少女にとっては、自分の手を眺めるくらいの感覚で鮮明に見えるのだ。見えるのだけれど、手が届かなければ意味がない。
イサメだったらもっと速く走れるのに。ナイトだったら一瞬で移動できるのに。
少女は血が滲むほど唇を噛み締め、自分の無力さをただただ恨んだ。
だが、あと少しで目的の場所に着く。もう少しだ。
鮮やかに光る髪が空に虹を架ける。
「ダリアぁ……!」
少女は一段と速さを増した。
最初のコメントを投稿しよう!