第1章

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①主人公の現在・・・庇護<逆位置> ②主人公の未来・・・自律 ③主人公の過去・・・幻想 ④援助者・・・信頼 ⑤敵対者・・・障害 ⑥結末(目的)・・・温厚<逆位置> --- 主人公は山岳地帯に生息する獰猛な雄の猛禽類。 この種は、親離れをして以降は群れを成さずに単独で狩りを行う。 彼は種の中でも変わり者であった。 毎日同じように狩りをし・獲物を喰らう。 そのルーチンの中に、自分の意思ではなく、別の何物かに支配されているかのような感覚を覚えていたのだ。 そう、自然に生きる動物として当たり前の“本能の赴くまま狩りを行う”ことに疑問を感じていたのだ。 彼はそれを良しとせず、本能を押しのけ、自らの意思で行動したいと願っていた。 彼が本能の存在に気付いた原因は、彼の記憶にある。 彼の記憶には、獲物を“食べた”記憶はあっても、獲物を“狩った”記憶がなかったのだ。 そのことに気付き、自身の半生を振り返ってみると、どうにも記憶が抜け落ちている場面が多々あったことに気付いたのだ。 彼が1日の大半を、空も飛ばず本能を抑制する方法について熟考して数日後、彼に1頭の仔山羊が話し掛けた。 山羊は彼にとって獲物であったが、自分だけでは答えを出すのは難しいと悟った彼は、仔山羊に自分の考えを話すことにした。 仔山羊から望む答えは返ってこなかったが、それから彼らは毎日話をするようになり、次第に彼らの間には種族を越えた信頼関係が芽生えていた。 彼は仔山羊と信頼関係を築いた事により、仔山羊の仲間である他の山羊を襲う事もなくなった。 しかし、彼が活動を抑えたことにより、隣の山から彼と同種族の猛禽類が飛来するようになった。 彼はそのたびに熟考を遮られ、仲間を追い払う事に時間を割かねばならなかった。 ある日の事、彼は隣の山の同族が、あの仔山羊に爪を食いこませ、連れ去っていくところを目撃した。 彼は激昂し、追い払うだけに留めていた同族に、殺意を以て攻撃を行うことを決意した。 しかし同時に、このまま攻撃しては仔山羊が地面に叩き付けられてしまう事に気付いた彼は、 仔山羊の安全を確保しつつ、同族を狩る方法を考え抜いた。 結果、仔山羊は助かり、隣山の同族を仕留めることに成功した。 別種族の仔山羊のために怒り、同じ種族を仕留めるという、本能にない行動をとったことで、彼は自分を確立するという望みを叶えた。
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