「小さな願い」

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「さっきから洗濯機、止まってない?」  濡れた髪をタオルで無造作に拭きながら部屋に入ってきた君の声に、また醒まされた。 「あ、本当だ。終わったってアラーム鳴ったっけ?」  洗濯機の様子を見ると確かに止まっていたのだけれど、洗濯が終わった訳じゃなくて、洗濯槽の蓋を締め忘れたたからすすぎの前で動作が停止していただけだった。  ばたん、と蓋を思い切り閉めると、またゆっくりと低い音で洗濯機はうなり続ける。  じっとりと汗をかいた背中にTシャツが張り付く。  蓋が閉まってなかっただけだったよ、と何でもない顔を作って笑いかけると。 「おまえって時々、困ったような顔して笑うね」 「そう?」 「うん、そう」
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