「小さな願い」

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「遅くなるから先にメシ食って寝てろって何度も言ってんのにさ、『おなか空かせて待っててあげたのに、どうして早く帰ってきてくれないの』だって。自分で勝手に待ってたくせにヒステリー起こして」 「……おまえは悪くないよ。いくら善意でも"してあげてる"って態度が見えるとむかつくよな。勝手に尽くしたくせに見返り求めてくる方がどうなんだって思うよ」  僕は笑って君に甘い蜜を与える。 「本当に行くとこなくなったらさ、ウチに転がり込んできてもいいから」  その言葉に君はゆっくりと顔を上げて僕の顔を見て、また目を逸らすように俯く。 「おまえだけはさ、絶対俺のこと責めないよな。俺がどんな女と付き合ったって、人の女に手を出したって、おまえはいつも……」  投げやりなことを言う時の深く沈んだ目つき、その目がたまらなくいい。  その顔が見られるのを僕は待ち望んでた。
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