「小さな願い」

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 空はひたすら馬鹿みたいに青すぎて、窓を開けると熱気を孕んだ風が入ってくる。  ベランダでひっくり返ってる蝉をサンダルの先で突くと、けたたましい羽音を立てて飛んでいく。  今日はのんびり出来そうにもない。 「おい、そろそろ起きろよ」 「ちょっとカーテン閉めて、まぶしい。大体熱風しか入ってこないじゃん」 「カーテン洗いたいんだよ。ほら、いい天気だし」  とりあえずもう起きなよ、と拾い上げるように足首を掴むと、くすぐったいと足をばたつかせて僕の手を振り払って、枕をぎゅうと抱えて身体を丸める。 「タオルケットだけはあげるから、枕カバーだけ洗わせろよ」  そう言うと折れて、タオルケットを丸めて抱え込んで顔を埋めて、また寝てる。  これは寝てるんじゃなくて、寝たふりをし続けてるだけだな。  枕カバーを回り始めた洗濯機に放り込んで、枕を窓の外の手すりにかける。  いい天気だな、とちょっと空を見上げてみる。
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