「小さな願い」

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「なんかばたばたしてるとこに突然来て、悪かったな」 「全然。休みの日に1人で家の片付けしててもつまんないし、おまえといると退屈しないから」  昼のニュースでは、陽炎の向こうに揺らぐ高層ビル群の映像が流れて、これからどんどん気温が上がって今年一番の暑さの記録を更新する見込みだって言っている。 「体温より高いって狂ってるよな」 「でもこんな日じゃなきゃカーテン洗えないし。……シャワー浴びてきたら? 僕も一段落ついたら浴びるし」 「……そうしようかな」 「汗かいたなら、Tシャツついでに洗っておくよ。この天気だから昼過ぎには乾くと思う。それまで僕の服着てて」  衣装ケースから適当に掴んだTシャツを手渡すと、じゃあお言葉に甘えてなんて言いながら浴室へ向かった。  着るものを奪って檻に閉じ込めて、なんて。想像するだけ。
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