「合鍵」

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 うっすら目を開けると目の前に先生の顔があって、今自分がどこにいるのかわかって安心した。  まだ夜が明けきらない空がカーテンの隙間から見える。  髭がちょっと伸びた先生の寝顔。これを見るのを許されてるのは僕だけだ、なんて。  ここに入ってきていいよって許された鍵。  その鍵を持ってる限りは、こうしてそばで体温を感じられる。  連休には郊外の大きな家具屋に行って、卒業したら同棲したいだとか、それが駄目なら二人で寝ても充分な大きさのベッドが欲しいなんて言って、先生を困らせよう。  そんなことを考えながら、もう一度目を閉じた。
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